改訂「健康経営アドバイザー・エキスパートアドバイザー共通テキスト 2025-2026」(東京商工会議所)が発行されました。
新設「飲酒」の項を執筆しましたので、支援に役立つ関連情報をご紹介します。
2024年2月に厚生労働省より「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が公表されました。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html)
アルコール健康障害の発生を防止するため、国民がアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、予防に必要な注意を払い、不適切な飲酒を減らすことが狙いです。
飲酒は、食事、運動、喫煙に並んで、健康に大きく影響を与える生活習慣のひとつです。
しかし、他の3つに比べると、職場でアルコール対策は十分に行われているとは言いがたい現状があります。
また、飲酒運転による事故やアルハラによる事件といった、社会的な問題は経営上のリスクとなります。
さらには、労働生産性へ目を向けることも重要です。国内の調査では、アルコール依存症疑いの方の欠勤、仕事中のパフォーマンス低下による生産性損失額は3兆円を超えると推計されています。
健康経営優良法人認定制度において、調査票には「従業員の生産性低下防止のための取り組み」に関する設問があります。
「アルコール依存症に対する具体的な支援(教育・検査・治療等)」の実施についても問われていますが、みなさまの支援先ではチェックが入れられるでしょうか。
健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定申請書
そこで、アルコール対策を効果的に進める上で、「SBIRTS(エスバーツ)」という概念を紹介します。
SBIRTS(エスバーツ)とは
- アルコールの過剰な摂取者を「みつける:Screening」
- 「かかわる:Brief Intervention」
- 「繋ぐ:Referral to Treatment and Self-help groups」
1には
「SNAPPY 飲酒チェックツール」 https://snappy.udb.jp/ の一つである 「SNAPPY-CAT」
2には
支援者・対象者向けリーフレット 30秒でできる「超」簡易減酒支援:Ultra-BI(支援者向け) お酒との上手な付き合い方:Ultra-BI(参加者向け)
3には
相談窓口・医療機関検索に、依存症対策全国センター https://www.ncasa-japan.jp/you-do/treatment/treatment-map/ や 減酒.jp https://gen-shu.jp/ のサイトが活用できます。
例えば、
「SNAPPY-CAT」 では、AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test: オーディット)という、WHOが開発した問題飲酒者のスクリーニングテストを実施できます。
また、「SNAPPY-PANDA」 https://snappy.udb.jp/drink-check では、飲酒量によるアルコール分解完了時間のめやすを知り、飲酒運転防止に役立ちます。
さらに、「減酒にっき」(https://gen-shu.jp/ サイト内)などのアプリは、飲酒量の把握と減酒に取組む上で有効なツールです。
また、アルコールの問題を抱えて困っているご本人、ご家族、関係機関の方からの相談は精神保健福祉センターhttps://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/sitaya/seishin/drug でできますが、
ピアサポートである自助グループとして、全国各地の断酒会とAA(Alcoholics Anonymous)を利用できます。
全日本断酒連盟 https://www.dansyu-renmei.or.jp/ AA日本ゼネラルサービス https://aajapan.org/
酒害のない生活を送るためには、集団精神療法は治療の大きな柱の一つとなります。
2025年6月に、職場のアルコール問題対策のヒントを盛り込んだ書籍が出版されました。
『どうする!? 職場のアルコール問題対策 予防・対応・リワーク支援』 金子書房
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b658078.html
試し読みはコチラから
https://www.note.kanekoshobo.co.jp/n/n16bf3435b6a5
産業医、精神科医、臨床心理士、そして回復した当事者による共著本であり、職場のアルコール問題対策に取り組む際や、アルコール問題を抱える社員の休復職支援など、日々の対応や支援のヒントを得られる内容です。
私は第1章を分担執筆し、健康経営の観点から、企業における組織的な対策の実践例を示しました。
第1章 職場におけるアルコール問題対策の進め方
1 はじめに
2 健康経営の観点からの対策の重要性と仕組みづくり
3 ゼロ次予防としての環境整備
4 一次予防としての社員教育
5 二次予防としての支援者教育,専門医療機関との連携強化
6 三次予防としての休復職対応
7 まとめ
みなさまの支援の一助としていただけますと幸いです。
令和6年度アルコール関連問題啓発週間ポスター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176316_00009.html
伊東明雅
産業医・労働衛生コンサルタント
健康経営エキスパートアドバイザー