定例会の内容を一部ご紹介します
2022年6月の定例会では、「健康経営とは」をテーマに、2022年度新入会の会員向けに、健康経営の概要・基礎知識の共有を図ると共に、健康経営も普及啓蒙期を終えて次のフェーズに入りつつあることを、経済産業省の発表資料などを参考にしながら確認しました。以下に、講演内容の一部をご紹介させていただきます。
健康経営の概要
90年代初頭にアメリカで生まれた健康経営が日本に上陸して、10余年が経過しました。上陸当時の日本の社会背景にあった「少子高齢化に伴う労働力人口の減少」「生活習慣病の重篤化」といった問題は、今日いっそう深刻化しつつあります。しかしながら、「健康経営を“知らない”」の回答は依然31パーセントに上り、未だ定着したとは言い難い状況にあります(日本健康会議調べ。n=9,605/2021年9月)。
健康経営は、従業員の健康管理は戦略的に取り組むべき経営課題であり、従業員が健康であれば、企業や社会の収益性・成長性が高まると考えることです。ともすると、“健康”の二文字に意識や活動が向きがちですが、健康経営は単なる「職場での健康づくり」や、定期健診結果の良化を目指すことではありません。
世界保健機構(WHO)は「健康とは、病気でないとか弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しています。この“社会的”が意味するところは、「社会的な存在としての私」、さらに「社会そのものが健康であるべき」という概念を含むと、私は理解しています。
なお、健康経営における“健康”に相当する英単語を、「ヘルス」ではなく「ウェルネス」「ウェルビーイング」とすると、よりしっくり理解出来るでしょう。ウェルネスとは「より積極的・創造的な生活行動を通じ、豊かな人生を目指すこと」。健康経営は、従業員個人の心身の状態に留まらず、企業や社会全体がより望ましい状態に好循環していくことを目指しているのです。
健康経営2.0
全体的に俯瞰すれば、日本における健康経営は道半ばではありますが、上陸から10余年を経て、また安倍政権の「働き方改革」や岸田政権の「新しい資本主義」といった国家戦略の文脈において、その位置付けや意義は変化しています。
象徴的なトピックスとして、今年度(令和4年度)の、経済産業省が主管してきた「健康経営優良法人認定」の民営化が挙げられます(受託事業者:日本経済新聞社)。平成26年度に導入された「健康経営優良法人認定」は、「具体的に何をどの様にすれば実行すれば良いのか」の指針、また企業が健康経営に取り組む上でのインセンティブとして機能・貢献してきましたが、国の事業としては一定の役割を果たしたということで、令和4年5月、経済産業省は「健康経営の深化に向けて」と名打ったペーパーを公表。「健康経営2.0」に進むことを明示しました。
当該のペーパーにおいて謳われたのは、①人的資本投資としての取組状況の開示、②健康投資の効果分析の深化、③国際的な発信を通じた日本ブランド化、です。
① は、「健康経営は、投資家や就活生などが求めるESGや非財務情報の一つである」という認識に基づき、企業に取組内容の開示を求めるものです。
② は、健康経営が業務パフォーマンス、さらに株価・利益率の向上に結び付いたのか。どの様な相関性が有ったのかの分析・評価を進めていくものです。
③ は、世界で最も早く少子高齢化の課題に直面しながらも、相対的には疾病罹患率や肥満率が低く、世界最長寿を誇る我が国のソフトパワーとして、健康経営を日本発の経営手法としてグローバルスタンダード化していこう、というものです。
最後に
以上、健康経営は「社会全体のウェルビーイングを目指すこと」、さらに「日本発の経営手法として、世界に発信していく」という壮大な計画にも紐づいていることをお伝えしました。
とはいえ、マクロな話はさておき、健康において最も重要なのは、食生活・運動・睡眠など、一人ひとりの心掛けや日々の行動であることは論をまちません。
あの大谷翔平選手も、選手として最も大事なのは「健康で、シーズンを通して出続けること」とインタビューで答えています。我々は大谷選手には成れませんが、大谷選手と同じ気持ちで、人生というボールパークに出続けることを意識していきたいものです。
檜山 敦子
中小企業診断士
健康経営エキスパートアドバイザー
健康ビジネス研究会・理事
講演内容
講演内容の全体像(目次)は、以下の例会報告のページでご確認ください。