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産業保健スタッフのための新腰痛対策マニュアル

皆さんの中で、日々腰痛にお悩みの方も多いのではないのでしょうか。

働く人にとっても腰痛は身近な問題です。生涯で腰痛になる日本人は全体の8割とも言われています。
(図1)産業保健スタッフのための新腰痛予防マニュアル より
休業4日以上の業務上疾病において、腰痛は全体の約6割を占め(第1位)、5000件に上ります。
*2022年厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査」より

さらに、腰痛による経済損失の大きさも見逃せません。
慢性的な痛みによる経済損失は約1兆9530億円と試算され、その原因で最も多いのは腰痛であるという報告もあります。
*Inoue S, et al. PLoS One. 2015;10:e0129262.

厚労省からは、平成6年に出された「職場における腰痛予防対策指針」が改訂を重ねており、関連する様々な資料やツールが出されています。

 


「産業保健スタッフのための新腰痛対策マニュアル」

今回は2021年に出された「産業保健スタッフのための新腰痛対策マニュアル」202115001A sonota1.pdfをご紹介します。
産業保健スタッフ向けのマニュアルですが、健康経営を進めていく上でとてもわかりやすく、参考になりますので、是非一度目を通してみて下さい。

内容を一部ご紹介します。
 

腰痛の危険因子

1.腰痛借金
「腰痛借金」とは腰回りに蓄積された負担のことです。猫背や前かがみの姿勢、重いものを持ち上げると腰に負担がかかります。それが積み重なり、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアといった負傷が起きるのです。

2.心理社会的要因
「腰痛借金」だけでなく、「職場の人間関係のストレスが強い」こと、「労働時間が週60時間以上」も腰痛を悪化させることが明らかです。さらには「働きがいが低い」「上司のサポート不足」なども腰痛を慢性化させる要因です。これはストレスにより、腰回りに物理的な変化が起きるということではなく、脳機能の不具合により、脳が痛みを生み出してしまうのです。
 

これだけ体操

とても簡単な体操ですが、「腰痛借金」を返済するのに効果があると示されています。
(以下「産業保健スタッフのための新腰痛対策マニュアル」より引用)

 

運動不足の解消

日常的に運動している人は、普段運動していない人に比べて腰痛の発症リスクが増大することがわかっています。目標とする運動量の目安は日本人がほとんどの病気のリスクを減らす目安とされている1日に8000歩(うち20分の中強度の運動)です。
また、長時間座り続ける生活スタイル(セデンタリーライフスタイル)は、腰痛の原因となることは想像に容易いでしょう。加えて、糖尿病などの発症率を上げるとも言われています。

 

睡眠障害の改善

腰痛持ちは睡眠障害を伴うことが少なくなく、睡眠障害(質・時間)は、翌日の痛みを予測すると言われています。睡眠を良くすることで、腰痛が改善できる可能性があるのです。

 

食事・栄養

ビタミンDの欠乏が腰痛と関連していると言われています。ビタミンDは骨と筋肉の健康、痛みや睡眠に影響します。また、ビタミンDは紫外線を浴びることでも体内で生成されるため、屋外活動も大切です。
「魚を週に3回以上食べること」「1日15分くらいは日にあたること」を心がけたいものです。

 

職場での対策

パソコン作業の姿勢、立位作業時の姿勢、運転姿勢、運転時間、長時間労働、人間関係のストレスなど、各々対策が有効です。
 

出典:「松平浩氏監修 産業保健スタッフのための新腰痛対策マニュアル」(厚生労働科学研究成果データベース)(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202115001A%20sonota1.pdf

 

保健師・労働衛生コサルタント
一般社団法人OHN協会理事
倉野かおり

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