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協会けんぽ「健康宣言事業」に見る各支部の特色ある取り組み

前回の投稿では、47都道府県の支部の健康宣言事業のエントリー内容を比較し、各都道府県支部でそれぞれ特色のある取り組みをしていることを見てきました。
そこで今回は、各都道府県支部で実施している健康宣言事業の中で、私が独断と偏見で特色ある取り組みを実施しているものをご紹介します。
(なお、本稿は2025年10月現在、各支部のホームページに記載しているものをまとめております)

山形県支部:「やまがた健康企業宣言」

山形県支部では、「やまがた健康企業宣言」として事業を展開しています。
山形支部の第3期保健事業実施計画(データヘルス計画)によると、血圧リスク保有者の割合と運動習慣要改善者の割合が全国平均よりも高いことにあり、特に脳血管疾患・急性心筋梗塞の年齢調整死亡率が高いという特徴があります。
この課題解決に向けて、ターゲットを絞った取り組みを実施しています。

<宣言の内容>

2025年4月1日より宣言内容がリニューアルし、従業員の健康診断受診率70%以上を必須要件とし、それに満たない事業者については、申し込みができなくなりました。
また、特定保健指導実施率の数値目標や、自社で取り組む内容を具体的に設定させるなど、より自主性を尊重した内容になっています。

<健康宣言事業のメリット>

宣言登録事業所に対して、運動、食事(減塩、カリウム摂取の啓発など)、メンタルヘルス、禁煙・受動喫煙防止といった多岐にわたるテーマの無料セミナーやDVDの無料レンタルを提供しています。
また、金融機関によるローンの金利優遇、求人票に健康宣言事業所であることを明記できるなど、社外へのアピールや人材確保に繋がるメリットを享受することができます。

富山県支部:「とやま健康企業宣言」

富山県支部では、「とやま健康企業宣言」として健康経営の推進に取り組んでいます。
富山支部は、2021年度のデータで特定保健指導実施率が全国1位を達成するなど、高い成果を上げており、その実績をアピールしています。

<宣言の内容>

富山支部の特徴は段階的なStepアップ制度を踏んでいる点です。
Step1は「健康経営に取り組むための基礎作り」、そしてStep2は「労働安全衛生を含めた健康経営の更なる展開」の2段階が設けられています。(東京支部の「銀の認定」「金の認定」をご存じの方は、これに近しいものと捉えていただいてよいでしょう)

まずはStep1のチェックシートで職場の健康状態を把握し、80点以上で「認定証(Step1)」が交付されます。
その後、さらに高度な取り組みを目指すStep2へ進むことで、継続的な健康経営の実践を促します。

なお、最初の宣言自体は、健診受診率100%、再検査該当者の受診、特定保健指導の実施、健康づくりのための職場環境の整備に関して、チェックを入れるだけと簡素な内容となっています。

<健康宣言事業のメリット>

一番のメリットは本事業に賛同した民間の支援事業者からの各種サービスを受けることができます。
支援事業者は保険会社が中心になっており、STEP1・2の取り組みの実践支援や、健康づくりに関する資料やセミナーの提供、スポーツクラブの入会金免除といったメリットを受けることができます。
また、STEP1・2の認定企業を対象に富山県が実施している「とやま健康経営企業大賞」に応募することができ、自社の健康経営の取り組みをアピールすることができます。

愛知県支部:「健康宣言」

愛知県は大都市圏でありながら、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の都道府県別認定法人割合(認定法人数を中小企業数で割ったもの)がトップクラスのエリアです。
愛知県支部では県内すべての自治体、44団体と協定を締結し、様々な健康づくりメニューを提供しています。

<宣言の内容>

愛知県支部の健康宣言の内容は検診受診率100%、特定保健指導の利用目標100%を必須項目にしたうえで、検診後の受診勧奨、家族の受診勧奨、食生活の改善、運動機会の促進、受動喫煙対策といった選択項目の中から1項目以上をチェックする内容となっています。
選択項目については健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定項目と類似しているようです。

<健康宣言事業のメリット>

愛知県支部のメリットとしては、60分までの健康づくり講座(訪問・オンライン)の提供、メンタルヘルス対策に関する出前講座などを実施しています。
また、取組実施報告書を提出した事業所を対象に、健康宣言Wチャレンジという制度を実施しています。
これは市町村ごとに多彩な健康づくりのサポートを行っており、例えば名古屋市の場合は受診勧奨、メンタルヘルス対策、卒煙プログラムなどを実施しています。
また、愛知県支部のホームページにはライフスタイル別 健康づくり動画の提供も行っています。

岡山県支部:「健活企業」

岡山県は健康経営優良法人(中小規模法人部門)の都道府県別認定法人割合(認定法人数を中小企業数で割ったもの)が全国で1位です。(経済産業省 第2回健康経営推進検討会事務局資料より)
岡山県では協会けんぽ岡山支部が中心となって、岡山県や経済団体などと連携して健活企業をサポートするため、「晴れの国から『健活企業』応援プロジェクト」を展開しています。

<宣言の内容>

岡山県支部の宣言の内容は「健診100%受診」「家族への検診受診勧奨」「特定保健指導率実施率」を宣言させる共通宣言と、自社独自に取り組む内容をフリーで記載させる「独自宣言」があります。
特定保健指導実施率は支部で設定せず、宣言企業が現状の実施率を踏まえたうえで設定する点や、独自宣言も特定の分野をチェックさせず、自社で取り組む内容を考えてもらうなど、自主性に任せている点が特徴です。

<健康宣言事業のメリット>

前述した「晴れの国から『健活企業』応援プロジェクト」の連携企業と様々な健康づくりメニューを提供しています。
例えば、訪問・オンライン型のメンタルヘルスや食事・栄養セミナーの提供、運動施設の利用特典や、保険会社と連携して健康経営優良法人認定の無料支援などを実施しています。
また、岡山県支部のホームページでは、健康に関するコラムを積極的に掲載したり、啓発普及に使えるパンフレットやポスター等を豊富に提供しており、全国の支部の中でも積極的な支援の姿勢を見せている印象を受けました。


他にも都道府県支部ごとに、データヘルス計画に基づいた様々な健康づくりサポートを行っております。
気になった方はぜひご自身の所属している健康保険組合に確認してみてください。

 

大口 憲一
中小企業診断士
健康経営エキスパートアドバイザー

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