「健康宣言事業」は、協会けんぽや健康保険組合等が企業の健康経営を後押しする制度です。
この事業に申し込むと、保険組合ごとに用意された健康づくりのための支援メニューを受けることができます。
また、健康宣言事業による健康宣言の発信は、健康経営優良法人申請の必須要件となっています(一部例外あり)。
「健康宣言事業」の申込みには「自社がどういう健康づくりに取り組むか」という宣言内容を記載する必要がありますが、その宣言内容は健康保険組合ごとに異なります。
「健康宣言事業」の申込みには「自社がどういう健康づくりに取り組むか」という宣言内容を記載する必要があるのですが、この宣言内容は健康保険組合ごとに異なっています。
そこで、今回はこの健康宣言事業で何を宣言するかを協会けんぽの都道府県別で比較・分析してみました。(なお、本稿は2025年10月現在、各支部のホームページに記載しているものをまとめております)
1.共通していること
それぞれの都道府県支部の宣言内容について、大まかに共通しているのは以下の3点です。
<ほぼ必須で宣言させること>
- 定期健康診断の受診率目標を決める。
- 特定保健指導の実施率を決める。
- 健康づくりに関する分野(運動、食生活改善、メンタルヘルスなど)の中から特定の分野を一つ以上決めて取り組んでいく。
<支部によっては必須で宣言させること>
- 再検査者、要治療者への受診勧奨
- 健康づくり担当者(健康保険委員)の設置・登録
特定保健指導を目標に掲げるのは、協会けんぽが特定保健指導実施のサポート(保健師・管理栄養士の派遣など)を実施しているので、それに準じていると考えられます。
また、定期健康診断についても支部によっては健診データの提供を要請しており、力を入れたい分野のようにも思えます。
2.違っていること
共通している部分がある一方で、支部により異なっている部分もあります
<定期健康診断の受診率目標>
47都道府県中、約9割が「100%受診」を目標として掲げており、健康経営の基盤として健診の徹底が重視されています。
その中で東北地方の支部は70~80%、前年度以上の検診受診率となっており、他の地方と比べて控えめな目標設定が目立ちます。
また、石川県や島根県など、従業員の健康診断だけでなく、家族(被扶養者)の健康診断の受診率目標を設定している支部もあります。
<特定保健指導の実施率目標>
特定保健指導実施率は各支部でかなりばらつきが見られます。
例えば、岐阜県や愛知県は「実質100%」を目指すと明記している一方で、数値目標を立てない県もあります。数字を見ていると近畿地方の支部では実施率が低い(大阪・兵庫では35%、周辺県では前年度以上という目標にとどまる支部が多い)傾向が見られます。
また、青森県のように「初回100%、2回目以降50%」と段階的な目標を設定しているところもあります。
<選択項目の分野>
多くの支部で取り上げている項目で多いのは「運動」「食生活」「喫煙」「メンタルヘルス」です。
概ね健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定項目に準じた内容になっている支部が多い一方、東京や神奈川など複数の支部で認定項目にない「飲酒・アルコール」を取り上げている支部があります。
また、京都では「性差に応じた健康課題」「歯・口腔の健康」「睡眠」など、より多様な視点を取り入れています。
項目については、細かな取り組み内容が記載されていて、それにチェックをさせる支部もあれば、項目のみにチェックをして、具体的な取り組みを自社で自由に記載してもらう支部もあります。
<その他>
神奈川や長野、三重や和歌山、兵庫といった一部の支部では、宣言の前に健康診断の結果等が記載された事業者カルテを事前に送付し、その内容を踏まえて取り組み内容を宣言している支部もあります。
このように同じ協会けんぽでも支部が違うだけでここまで内容が変わっています。
ぜひ協会けんぽだけでなく、その他の健康保険組合でどういうことを宣言させるのか、確認してみるのも面白いかもしれません。
大口 憲一
中小企業診断士
健康経営エキスパートアドバイザー