檜山会員による視聴の感想
去る6月28日、主人公の妻役であり、本投稿の「その1」「その2」を執筆された社会保険労務士・小島希美先生のお誘いで、ロケの協力企業であるウチダシステムズ様で開催された「いまダンスをするのは誰だ?」の上映会に参加しました。
今回は映画の感想を、健康経営に関わる者としての若干の考察を加えて述べたいと思います。
※ネタばれを一部含みます。ご容赦ください。
「パーキンソン病の一般的なイメージ
私が初めて「パーキンソン病」を知ったのは、1996年アトランタ五輪開会式でモハメド・アリの姿を見た時でした。
リングの外でも公民権運動やベトナム反戦運動を戦っていたあの華麗なモハメド・アリが、おぼつかない足取りで聖火台に上り、震える手で火を灯すのを見た時の驚きは今も忘れられません。
開会式は約35億人が視聴したそうなので、私同様に彼を通じてパーキンソン病を知り、テレビの前で衝撃を受けた人は少なくなかったと思います。
オリンピックという全世界が注目する祭典に、表現に語弊はありますが、“自身の変わり果てた姿を晒すこと”の勇気は如何ばかりだったでしょう。
その次にこの病気に遭遇したのは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でおなじみのマイケル・J・フォックスが、病気と折合いを付け、カメラの前に戻って来た時です。
手先が震えたり杖を使って歩くなど、症状の断片は見せるものの、ストーリーにおいて病気は何らフォーカスもされないのがむしろ新鮮でした。
自分や身近な人間が罹患する可能性も
そんな訳で、私自身はパーキンソン病を全く知らなかった訳ではないのですが、「アメリカに多い風土病的なもの」などと薄ぼんやりイメージしていただけでした。
ところが今回、上映前に古新舜(こにいしゅん)監督が「患者であった松野幹孝氏の実話に基づく」「日本にも30万人の患者がいる」とおっしゃったのを耳にして、一気に自分事化。
自分や身近な人間も罹患する可能性がある。であれば、知っておくべきこと・為すべきことは何なのか!などと、いささか身構えて映画を見始めました。
とはいえ、映画は何らこちらに思考を強制するものではありません。
主人公・馬場功一を演じた樋口了一さんは本職がミュージシャンなので、劇中やエンディングに流れる音楽はノリノリ。樋口さんや妻役・我らが“小島のぞみ”をサポートする役者陣も超豪華。時間も114分と、短か過ぎず長過ぎず。上質なエンターテインメントとしてピュアに楽しめました。
軽やかに考えられるよう導く監督のセンスに感服
登場人物は等身大の人々です。描かれる些細ないざこざは、我々も日常的に経験していることばかり。
ただ、そこに病気が在ることで、何でもないはずのいざこざが容易にトラブル化してしまう。
我々視聴者は、原因がパーキンソン病であることを知っていますが、スクリーンの中の人たちは知らないからです。
トラブルが積み重なった結果、主人公はついに会社で降格処分に遭い、妻から三下り半を突き付けられてしまいます。
ですが、同じ病を抱える仲間は彼を見捨てない。彼らは少なからず主人公と同じ道程を辿っているからです。
主人公は徐々に、ありのままの自分と病を受け入れ、変わっていきます。
自らがパーキンソン病であることを会社でカミングアウト。罹患したからこそ得た視点を活かした提案は大口受注に結実。家族との関係も修復されます。
ハッピーエンドに仕上げることで、見る側を辛い気持ちにさせず、軽やかに考えられるよう導く監督のセンスに感服しました。
檜山 敦子
健康経営エキスパートアドバイザー
中小企業診断士
※画像引用:「いまダンスをするのは誰だ?」公式サイトより引用