理学療法士の会社が、ブライト500を6年続けられる理由
東京都世田谷区で、フィットネススタジオや訪問リハビリを手がける株式会社アロー。
理学療法士を中心とした社員6名の会社が、健康経営優良法人を7年連続、ブライト500を6年連続で取得しています。
「お客様に勧める前に、まず自分たちで体感する」。
そこから始まった健康経営は、自社のサービスをどう変えたのか。
代表取締役の阿藤貴史さんに伺いました。

代表取締役の阿藤貴史さん
会社概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社アロー |
| 所在地 | 東京都世田谷区砧6-36-3 信濃屋第一ビル3F |
| 事業内容 | フィットネススタジオ、保険外訪問リハビリ、企業向け健康教育(腰痛予防セミナー等) |
| 創業/設立 | 創業2011年11月/設立2014年2月 |
| 代表者 | 代表取締役 阿藤貴史 |
| 従業員数 | 6名(関連会社約15名、業務委託スタッフ約30名) |
| 資本金 | 777万円 |
| 健康宣言 | 2020年 |
| 認定・表彰 | 健康経営優良法人 7年連続(2020年〜)/うちブライト500 6年連続(2021年〜)/東京都スポーツ推進モデル企業 |

トレーニングスペースの受付
理学療法士の専門集団が、チームで健康経営を動かす
アローは、フィットネススタジオと保険外の訪問リハビリを軸に、企業向けの腰痛予防セミナーなどの健康教育も手がけています。
関連会社の株式会社アロー・ケアクルーズでは介護タクシーや福祉用具貸与も担い、スタッフの多くが理学療法士の資格を持つ専門家集団です。
健康経営は、代表と事務長、各拠点・部署の担当者からなる「健康経営チーム」が推進し、外部の産業保健サービス会社の保健師、顧問社労士、健康経営エキスパートアドバイザー(当会会員の保健師)が支えています。

スタッフによるストレッチのサポート
きっかけは、お客様からの一言
始まりは2016年頃。フィットネススタジオを利用していた企業の役員から、「営業社員に腰痛や体の不調が多い。社員向けの腰痛予防のセミナーをやってほしい」と頼まれたことでした。
出張セミナーを続けるうちに、阿藤さんの中に問いが生まれます。
「なぜ自分たちが呼ばれているのか。人事の方は、どういう評価や結果報告を求めているのか」
そこで健康経営という取り組みを知り、こう考えました。
「顧客企業が本当に求めるサービスを知るためにも、まずは自分たちで実践して、成果や課題を体感してみよう」
申請書に、チェックがつかなかった
ところが、いざ申請書を書き始めると、チェックがほとんどつきませんでした。
「それまでは、休憩時間も取れる時に取る、という状態でした。自社の不十分な点に気づかされて、『ブラッシュアップしてやってみよう』と。
経営者自らが率先して、楽しみながら社員と一緒に始めることにしました」
壁はもう一つありました。
訪問リハビリのメンバーは拠点を持たずに各地を回るため、「拠点のメンバーだけずるい」という不公平感が出ないよう、社員の意見を吸い上げて制度を周知する担当者を置いています。
後述するウェルネス休暇は、導入から2か月間は利用がゼロ。運用を見直して初めて動き出しました。
年間サイクルで回す
推進の柱は、年間のサイクルです。
年初と半期の「経営計画発表会」では必ず健康経営の時間を設け、社員の健康が会社にとってどれほど大切かを、代表自らの言葉で伝えます。
年2回(12月と8月頃)の「健康調査アンケート」で、生活習慣、ストレス、エンゲージメント、社内の健康風土、各制度の利用率を調べ、12月に課題と伸びしろを特定して翌年の年間計画と数値目標を立てる。
8月の中間チェックでは「なぜこの施策の利用率が上がらないのか」を深掘りして修正し、週1回のオンラインミーティングで月次の施策と評価、役割分担を確認します。
「年間計画をしっかり立てているので、日々の業務で忙しくてもブレることなく続けられています」

打ち合わせをするスタッフのみなさん
社員が選び、社員が支える ―― 3つの施策
2026年1月に始めた「わたしスタイル健康サポート制度」は、年間3万円を上限に、歯科検診やアレルギー検査、ピルの費用補助、育児補助、ヨガの体験費用などを社員が自分で選べるビュッフェ式の制度です。
コンセプトは「私の健康、私が選ぶ」。
生理や更年期、家族の看病などに時間単位で使える「ウェルネス休暇」は、休んだ人の勤務を代わった社員にポイントを付与する「サンキューポイント制度」と組み合わせたことで、2か月間ゼロだった利用が15件になりました。
会社方針の理解度を測る「浸透度テスト」も、ゲーム感覚で行っています。
地域との連携も特徴です。
アンケートで若手の「朝食」と「睡眠」が課題と分かり、商店街の朝食を食べられる店を紹介して食事代の半額を補助する「朝食マップ」を実施。
利用店舗が偏ったため、新入社員のアイデアで祖師谷南商店街と連携した「朝食スタンプラリー」に改め、朝食・睡眠・運動を組み合わせた社内の健康点数は54点から70点へ上がりました。
成果は、自社のサービスに表れた
「自社で実践したことで、社外向けにヘルスケアコンテンツを提供する際に、評価指標の取り方や、集客・周知の工夫といったリアルなノウハウをお伝えできるようになり、付加価値が高まりました」
社内では、30代前後の若手が多いがゆえの「将来のキャリア不安」にも向き合っています。
「みんなで働きやすい会社を作るために意見が欲しい」と伝え続け、家族登山の体験談を全体会議で発表してもらうなど、孤立や置き去り感を防ぐ風土づくりを重ねてきました。
会社の周年パーティーでは、食事のあとに体育館を借りて、社員みんなでパラスポーツのボッチャを楽しみました。
採用では「ここまで充実した福利厚生やサポートのある会社はない」と評価され、健康経営に共感して入社する人材が増えています。
メディアへの露出も増え、社外からの信頼が高まってきたと阿藤さんは感じています。

周年パーティーで、社員みんなで楽しんだボッチャ
まずは、申請書を埋めるためだけでも
今後の課題は、規模の拡大に伴い、熱量についていけずに置いてけぼりになる社員を出さない仕組みづくりだと阿藤さんは言います。
これから取り組む中小企業へのメッセージは明快です。
「申請書を埋めるためだけのスタートでも、まずは始めてみよう。項目をクリアしていくプロセスが、労務管理などの体制を整える絶好の機会になります。できることから少しずつ始めれば、確実に会社は良い方向に変わっていきます」
将来は他の企業も巻き込んだ「合同の健康経営」を進めたいと考えています。
「みなさん一緒に、健康経営を始めていきましょう」
取材・文/坂本 宣明
健康ビジネス研究会 会員
ヘルスデザイン株式会社
産業医・労働衛生コンサルタント
※同社はアローの産業保健サービスを担当しています

坂本 宣明(取材・文)
取材者の感想
今回の取材を通じて、ブライト500の連続認定の秘訣は、定期的な健康調査等に基づく着実なPDCAの仕組みにあると感じました。
健康経営チームが主体的に、楽しみながらユニークな健康施策を毎年生み出している姿が印象的でした。
今後のさらなる飛躍が楽しみです。