実践支援成果

健康経営優良法人認定2023 の申請について

定例会の内容を一部ご紹介します

2022年9月の定例会では、健康経営優良法人認定2023(中小規模法人部門)について、その背景や、基準検討委員会、WG(ワーキンググループ)での会議内容を踏まえ、今後の健康経営に係る政府方針や、今年度の法人認定の変更点について解説しました。
以下に、講演内容の一部をご紹介させていただきます。
 

健康経営の拡大

日本国内では、経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課が中心となり、平成26年度(2014年)から健康経営顕彰制度が創設され、「健康経営銘柄」の選定が開始されました。

また、平成28年度(2016年)には「健康経営優良法人認定制度」が創設され、制度として6年目となる令和3年度(2021年)には、大規模法人部門、中小規模法人部門をあわせた申請数が15,718社に上り、そのうち、中小規模法人部門には12,849社(対前年度比較で3,446件増加)であり、各企業においても段階的ながら高い関心が持たれ、健康経営の広がりが感じられます。

なお、令和3年度の選定では、大規模法人部門が2,299法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加する)、中小規模法人部門が12,255法人(上位法人には「ブライト500」の冠を付加する)となっています。

また、令和4年に入り、3月の通常国会においても、「新しい資本主義における健康経営の位置づけ」として、健康投資の意義と、国際的な発信についての答弁がなされ、健康投資は、新しい資本主義の中でも重要な要素となっており、日本が世界をリードできる可能性を持つ分野であるとされています。

すでに、健康投資においては、①資本市場におけるアプローチ②労働市場におけるアプローチもなされ、①では、健康経営の実践が、生産性や企業イメージ等を高め、組織の活性化や企業業績の向上も期待できることから、経営陣に求められる重要な要素となっていること。
また、ハローワークでの法人認定のロゴマークが今年6月から利用可能となり、さらに、「パートナーシップ構築宣言」のひな形に「健康経営に関する取組」が追記されるなど、具体的な制度活用がはじまっています。
 

今年度の健康経営の制度設計

今年度の認定申請書兼誓約書作成については、健康・医療新産業協議会第6回健康投資WGにて、以下のポイントが提示され、概ねこの方針に沿って健康経営の制度設計がなされ、今年用の同認定申請書が改訂されています。

出典:令和4年7月26日 健康・医療新産業協議会第6回健康投資WG 事務局説明資料

①「情報開示の促進」
「情報開示の促進」は主に大規模法人に向けたもので、健康経営度調査に回答することで送付されてくるフィードバックシートの情報開示に係るものです。
令和4年3月には、情報開示を了承した2,000法人分の評価を経産省ウェブサイトで一括開示されましたが、その情報内容の充実と、更なる活用を見据え、国際的な非財務情報開示の推奨項目や定量的な項目の追加がなされています。
 

②「業務パフォーマンスの評価・分析」
「業務パフォーマンスの評価・分析」では、こちらも主に大規模法人に向けたもので、昨年度に引き続き、従業員のアブセンティーイズムやプレゼンティーイズム、ワークエンゲイジメント等に関する測定状況が問われています。

また、それに加え、こうした情報をストーリー立てて、健康経営を推進する事業者がステークスホルダーとの対話に用いることが望ましいといった観点から、業務パフォーマンスの経年変化や測定方法に関する開示状況についても問われています。(今年度は、任意回答とし、評価には用いない)
この業務パフォーマンスの経年変化については、それに続く企業価値の前提となる指標であり、いずれ中規模法人においても把握すべき項目としてリスト化される可能性が高いと思われます。

出典:令和4年7月26日 健康・医療新産業協議会第6回健康投資WG 事務局説明資料

 

③「データ利活用の推進」
「データ利活用の推進」では、大規模、中小規模法人に対して、効果的・効率的な保健事業の実施に向けて、40歳以上の従業員のデータ提供に加え、40歳未満の従業員のデータ提供についても新たに設問を設けることとしています(中小規模はアンケートとして実施)

また、データ利活用の促進に向けたフォーマットの標準化を進めるため、データ提供における形式(XML形式、CSV形式、PDF形式等)を問うように変更がなされています。
 

各評価項目のポイントとブライト500申請のポイント

今年度の「健康経営優良法人認定制度」の運営事務局は、日経新聞、日経リサーチ、日本総合研究所が受託しており、ACTION!健康経営 ポータルサイトからの申請受付となっています。また、これまでとは異なり、申請には、大規模・中規模、共に有料化がなされ、申請後12月9日までに認定申請料の支払いをするようになっています。

ただし、法人認定の「認定要件」については昨年度と同様であり、各評価項目における変更点については研究会で報告した通りですので内容を割愛します(参照:当日の配布資料)

ブライド500の選定方法では、これまでも問われていた社外への情報発信に加え、PDCAの取組状況、経営者・役員の関与度合いについても評価が行われ、その割合が「適合項目数:自社情報発信:外部依頼情報発信:PDCA取組状況:経営者等の関与=3:2:1:3:1」になりました。
適合項目の内容に大きな変化はないものの、ブライト500の選定方法での配点ウエイトが変更されており、支援を行う専門家は、「健康経営の制度設計」における国の方針を理解し、事業者へのアドバイスを行っていくことが望まれます。
 

最後に

以上、導入では健康経営の拡大について触れ、また、今年度の健康経営制度設計と申請におけるポイントについて説明をいたしました。

社会への啓蒙が進むことで健康経営のブランド力はますます向上し、企業業績の向上、従業員のエンゲージメント向上やWell Beingの実現に大きく寄与していくことが期待されます。
大企業だけでなく中小企業への支援の観点からは、事業者は企業規模にあった継続的な取り組みが求められ、その状況に応じた柔軟な支援が必要になります。今後、健康経営エキスパートアドバイザーが果たす役割は、ますます増えていくのではないでしょうか。

中村 稔
中小企業診断士
健康経営エキスパートアドバイザー
健康ビジネス研究会・理事


講演内容

講演内容の全体像(目次)は、以下の例会報告のページでご確認ください。

 

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