定例会の内容を一部ご紹介します
2022年9月の定例会での中小規模法人部門の健康経営優良法人認定に引き続き、10月の定例会では、大規模法人での支援についてお話しさせていただきました。お話しした内容をご紹介させていただきます。
大規模法人と認定要件について
「大規模法人」というと、数千名を越える企業を想像する方が多いと思います。ですから、健康経営で大規模とされている法人の人数を聞くと、びっくりする方もいるかもしれません。
資本金の額にもよりますが、人数だけで言えば、卸売業やサービス業では101人以上、小売り業では51人以上、製造業その他では301人以上が大規模法人に該当します。「うちは中小企業だから」と思っている企業も実は大規模法人に該当する可能性があります。
認定の種類は3種類あります。上場企業で各業種のトップ企業が、「健康経営銘柄」として認定を受けられます。そして、上場、非上場関係なく、上位500社は「ホワイト500」、そして、認定要件をクリアしたそれ以外の企業が冠は何もつきませんが、「健康経営優良法人認定」企業です。
2014年度の認定制度開始以来、申請数、認定数共に右肩上がりで、2021年度には2,869社の申請数がありました。認定企業数も2,299社となっています。
認定されるには、健康経営度調査という70数問ある調査票に回答して、認定要件をクリアすることが条件となります。かつ、コンプライアンス違反など法令違反や不祥事がなければ、認定されます。健康経営銘柄やホワイト500を目指す企業は、ほぼ満点を目指さないと取得が難しい状況になっています。 逆に言えば、それだけ、健康経営の認知度があがり、力を入れる企業が増えていると言うことでもあります。
大規模法人支援の具体事例
2018年から現在に至るまで、私自身がゼロから手探りで支援を続けてきて、自分なりのコンサル手法を見いだし、成果を出している事例をご紹介させていただきました。
社員数約1,500名の上場企業様のご支援です。全社的に、風土改革のプロジェクトを立ち上げており、その一環として健康経営が位置づけられました。
支援のスタート
私自身、健康経営エキスパートアドバイザーを取得したばかりで、大規模法人の支援は初めてでしたから、不安と緊張でいっぱいでした。中小規模法人と違い、設問数も多く、非常に多岐にわたり、しかも細かいのが特徴です。
何はなくとも、まずは現状把握をベースに進めることとしました。昨年の健康経営度調査をまずやってみるところからスタート。やり始めると更に混乱が起きます。
項目が多いため、社内で対応できていない項目がたくさん出てきて、何から手を付けて良いのか途方にくれます。そこで、整理するための手法を考えました。
ゴールまでの道のりの可視化
課題を整理するために、以下のように進めることにしました。
- 現状把握で今を知る
- 一覧作成で見える化
- 難易度に振り分ける
- 優先順位を決める
- 必須項目をクリアする
対策の肝は、一覧で未実施項目と、難易度、優先順位がわかる「課題見える化シート」です。70問以上ある設問のひとつひとつの項目をすべて一覧にして、俯瞰して見えるようにしました。実際作成はとても大変なのですが、以来、ずっとこのシートをもとに対策立案と対策実行をし続けています。課題の整理には、まずは現状と何ができるかを見える化することは非常に有効です。
ゼロから支援で難しいこと
最初の難関は、健診データの一元化でした。支店が非常に多く、各支店で健診データがバラバラに管理され、データフォーマットもバラバラ。健診データを集めるだけで、担当者が一苦労する事態になり、毎年これをやっていたら仕事にならない・・・ということで、ネットワーク健診を導入することになりました。少し大がかりですが、こういう地盤固めが継続的な健康経営につながるので、多少コストと導入労力がかかっても、やっておくにこしたことはありません。
次に、産業医との連携が課題になりました。産業医がいる事業所といない事業所があり、産業医同士の連携もなかったので、対応がまちまち。健康経営では、産業医との連携は必要不可欠です。そこで、統括産業医をいれることにしました。中心となる産業医がいると、全社取り組みがとてもスムーズになります。
3つめに、ヘルスリテラシー教育が課題としてあげられました。全社員に多岐にわたる健康分野の教育を行わなければなりません。そこで、健康経営に特化したオリジナルのe-ラーニングのコンテンツを作成して、実施することにしました。
これらの施策は、一気に行うことはできないので優先順位を決めて、徐々に対応することで実現しました。優良法人認定は、必須項目をクリアすれば、100点満点でなくとも、認定される仕組みですから、最初から100点を目指さずに、できるところから取り組むことが成功への近道です。
そして、無事、2019年に健康経営優良法人認定を取得。以降ずっと、途切れることなく、認定を受けられるようになりました。
健康経営の実現のための大切なこと
健康経営優良法人認定は、ひとつの指標にはなりますが、目的にはなりません。
大切なことは、組織にしっかりと健康の大切さを根付かせ、変化を生み出すことです。変化を生み出すことに大切なのは、「無理をしない」「簡単に改善できることを着実にする」ことだと実感しています。小さくても、確実に変化していると社員さんたちが感じることが、何よりも大切だと思います。
この企業では、30%台後半だった喫煙率が20%台になりました。着実な取り組みの先に、ホワイト500などの認定があるのが理想的ですね。
小島希美
社会保険労務士
健康経営エキスパートアドバイザー
健康ビジネス研究会・理事
講演内容
講演内容の全体像(目次)は、以下の例会報告のページでご確認ください。