執筆講演成果

健康企業宣言『銀の認定』について(第2回)

この研究成果発表では、東京都の健康宣言事業である健康企業宣言『銀の認定』の制度概要及び取組について、全9回に分けて説明させていただきます。

第2回以降は、7分野18項目の質問(取組)の詳細について見ていきたいと思います。
なお、7つの取組分野は「健診等」「健診結果の活用」「健康づくりのための職場環境」「職場の食」「職場の運動」「職場の禁煙」「心の健康」からなっております。

今回の第2回は、取組分野「健診等」の①~③の3つの質問(取組)について確認していきます。

執筆者 江崎 泰将
中小企業診断士/健康経営エキスパートアドバイザー/健康ビジネス研究会・理事/
健康企業宣言東京推進協議会 金の認定ワーキンググループ 委員
東京都出身。経営コンサルティング会社を経て、2016年に独立。2012年中小企業診断士登録。
健康経営アドバイザー・エキスパートアドバイザー研修のテキスト執筆・研修コンテンツ作成・講師などに携わる。銀の認定、健康経営優良法人認定取得支援に多くの実績を有する。

    • 目次

 

健診等

質問①:従業員の皆様は健診を100%受診していますか?

質問①の取組は20点満点と配点が高くなっています(表1-1参照)。『銀の認定』に必要な80点以上を獲得するためには、配点20点を獲得することが認定取得への近道と言えます。なお、20点を獲得するためには「健診受診率80以上」が必要となります。

表1-1:配点表(質問①)

配点 採点基準
20点 ・健診結果提供率80%以上
10点 ・健診結果提供率50%以上~80%未満
1点 ・健診結果提供率50%未満

また、健保連東京連合会、協会けんぽ東京支部の各保険者には採点基準表が存在し、そこには各配点の詳細が記載されております。基本的には、各保険者の採点基準は同じとなりますが、若干異なるところもありますので注意が必要です。なお、異なる部分については各質問の説明で触れていきます。採点基準表は各保険者のHP上からダウンロードできますので、取組む際には必ずご確認ください(表1-2、表1-3参照)。

表1-2:採点基準表(健保連東京連合会) 質問①のみ抜粋

表1-3:採点基準表(協会けんぽ東京支部) 質問①のみ抜粋

最後に申請に必要なエビデンスと取組(質問①)のポイントについて以下にまとめましたので参考にしてください。

【エビデンス】

  • 健診受診状況確認リストなど
    ※氏名、年齢、受診種類(事業者健診・生活習慣病健診)受診日、受診機関などがわかるもの
    ※保険者によっては、直営・契約健診機関で全従業員が受診した場合はエビデンスの提出が不要な場合があるので、申請前に保険者に確認ください
【ポイント】

  • 企業と保険者で把握している健診受診率にそれぞれ相違がないか申請前に必ず保険者に確認しましょう。
  • 人事・総務部門などで健診受診状況確認リストを作成して、受診するまでフォローするなど健診受診率向上に向けた取組を実施しましょう。

質問②:40歳以上の従業員の健診結果を、協会けんぽ・健康保険組合へ提供していますか?

質問②の取組も20点満点と配点が高くなっています(表2-1参照)。『銀の認定』に必要な80点以上を獲得するためには、こちらの取組も配点20点を獲得することが認定取得への近道と言えます。なお、20点を獲得するためには「健診結果提供率80以上」が必要となります。保険者が実施(提携)している健診機関で受診した場合、自動的に健診結果が保険者に提供される場合もあります。データ提供がどのような状況にあるのか、まずは企業側から保険者に確認してみましょう。また、データ提供がなされていない場合は、データ提供に関して保険者に意思表示(『健診結果データの提供に関する同意書』の提出)していれば、該当者分としてカウントされますので、必要な手続等について保険者に確認しましょう。

表2-1:配点表(質問②)

配点 採点基準
20点 ・健診結果提供率80%以上
10点 ・健診結果提供率50%以上~80%未満
1点 ・健診結果提供率50%未満

また、各保険者の採点基準表は下記の通りとなっております(表2-2、表2-3参照)。

表2-2:採点基準表(健保連東京連合会) 質問②のみ抜粋

表2-3:採点基準表(協会けんぽ東京支部) 質問②のみ抜粋

最後に申請に必要なエビデンスと取組(質問②)のポイントについて以下にまとめましたので参考にしてください。

【エビデンス】

  • 健診受診状況確認リストなど
    ※氏名、年齢、受診種類(事業者健診・生活習慣病健診)受診日、受診機関などがわかるもの
  • 健診結果データの提供に関する同意書など
    ※データ提供に関して保険者に意思表示している場合
【ポイント】

  • 健診結果のデータ提供がなされているか、まずは企業側から保険者に確認しましょう。
  • 自動的に健診結果が保険者に提供される場合もあるので、自動的に健診結果が提供されている該当者については企業側でも把握しておきましょう。
  • データ提供がなされていない場合は、データ提供に関して保険者に意思表示(「健診結果データの提供に関する同意書」の提出)していれば、該当者分としてカウントされるので、必要な手続等について保険者に確認しましょう。

 

質問③:健診の必要性を従業員へ周知していますか?

質問③の取組は5点満点となっております(表3-1参照)。健保連東京連合会と協会けんぽ東京支部で採点基準が異なりますので注意が必要です。健保連東京連合会では、「全従業員に対して健診案内受診勧奨ともに健診の必要性」を周知していれば5点となりますが、協会けんぽ東京支部では3点となります。協会けんぽ東京支部で5点を獲得するには、「全従業員に対して健診案内受診勧奨ともに健診の必要性」の周知に加え、「受診義務」と「健康増進への対応(健診後の検査・指導等)」の周知が必要となります。また、健保連東京連合会では、5点の取組を「1カ月以上6カ月未満」実施していれば3点が獲得できますが、協会けんぽ東京支部ではそのような措置がないので注意が必要です。なお、健保連東京連合会では、「健診の必要性」についての周知がなく、「全従業員に対する健診案内受診勧奨」のみの取組であれば3点となります。なお、それ以外の取組は1点となります。

表3-1:配点表(質問③)

配点 採点基準
5点 【健保連東京連合会】
全従業員に対して健診案内受診勧奨ともに健診の必要性を周知している
【協会けんぽ東京支部】
全従業員に対して健診案内受診勧奨を行っており、健診の必要性受診義務健康増進への対応(健診後の検査・指導等)を周知している
3点 【健保連東京連合会】
全従業員に対して健診案内受診勧奨を行っている
・5点(満点)の取組期間が1カ月以上6カ月未満
【協会けんぽ東京支部】
全従業員に対して健診案内受診勧奨ともに健診の必要性を周知している
1点 ・上記以外

また、各保険者の採点基準表は下記の通りとなっております(表3-2、表3-3参照)。

表3-2:採点基準表(健保連東京連合会) 質問③のみ抜粋

表3-3:採点基準表(協会けんぽ東京支部) 質問③のみ抜粋

最後に申請に必要なエビデンスと取組(質問③)のポイントについて以下にまとめましたので参考にしてください。

【エビデンス】

  • 健診の必要性に関する周知・案内文(紙⾯配布、メール、社内回覧、貼紙など)
    ※周知・案内した日付が記載されていること
【ポイント】

  • 全従業員に対して「健診案内・受診勧奨」加えて、①健診の必要性(予防・未病等)②受診義務(法律の義務等)、③健康増進への対応(健診後の検査・指導等)も周知しましょう。
  1. 健診の必要性(予防・未病等)
    【記載例】
    定期健康診断は、病気の早期発見、早期治療だけでなく、自身の健康状態を把握して問題点を改善するという重要な役割があります。など
  2. 受診義務(法律の義務等)
    【記載例】
    法律(労働安全衛生法)では、事業者には定期健康診断の実施義務があり、労働者には受診義務が定められています。など
  3. 健康増進への対応(健診後の検査・指導等)
    【記載例】
    健診後に異常の所見があった方は保健指導を実施しますので、是非受診してください。

    健診後に特定保健指導の対象者となった方は、特定保健指導を実施しますので、是非受診してください。
    健診後に再検査・精密検査が必要と判断された方は、再検査・精密検査も受診してください。

 

注意事項および参考資料

注意事項
今回の『銀の認定』の制度概要の説明に関しては、2023年度の申請書類をもとに作成しています。取組内容や採点基準については都度更新されていますので、年度が変わっている場合は必ず最新版の申請書類をご確認ください。

参考資料
健保連東京連合会HP:健康企業宣言「銀の認定」・「金の認定」を目指しましょう
https://www.kprt.jp/contents/health/
健保連東京連合会:「健康企業宣言銀の認定研修会」資料
協会けんぽ東京支部HP:健康企業宣言とは
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/tokyo/cat070/collabo271210-1/
関東ITソフトウエア健康保険組合:「銀の認定」解説と添付資料例 R5.5更新

 

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