企業の課題
A運輸株式会社は従業員数90名の運送業です。
社長は“安全”を非常に大切にし、その思いを込めて経営に取り組んでいます。その思いが従業員に伝わり、従業員の安全の意識は非常に高いものがあります。社長は“安全”の前提は“従業員の健康”があってこそ、と考えています。しかし、従業員は健康管理に対する意識は低いのが現状です。
A 運輸は、年々、生活習慣病の患者が増えています。社長は特に、ドライバーの食生活に課題を感じています。運送に出てしまえば、何を食べているのか把握できません。かなり偏った食事をしている人が多いと感じています。
また、A 運輸には 3 拠点の事業場があり、本社に健康づくりの担当者を置いています。しかし、本社以外には健康づくりの担当者がいないため、拠点ごとで取り組みに温度差も出ています。
取り組み前の企業の状況
社長の従業員の健康づくりに対する意識は高いため、よい取り組みも多く行われています。
健康診断は受診率100%を達成しています。総務部では受診状況を一覧で管理しており、必ず全員が受診するまでフォローしています。また、有所見者に対しても、必ず再検査を受けるまでフォローしています。再検査日の「業務調整」「出勤日認定」「再検査費用の会社負担」といったしくみが確立されており、再受診しやすい職場環境が整備されています。健診後は、産業医による保健指導や、健康保険組合と連携した対象者に対する特定健診と特定保健指導もしっかりと行われています。
取り組んだ施策
健康づくり担当者の選出
課題を解決するために、まずは拠点ごとに健康づくりの担当者を決めて、毎月、健康づくり担当者の話し合いの場を設けました。他の拠点の健康づくり担当者の意識も向上し、各拠点の温度差解消が徐々に図られるようになりました。
食生活の改善
次に、食生活の改善方法としては、現状を把握するために、ドライバーに協力していただき、ふだん食べている食事について、写真を撮っていただくようお願いしました。保健師と協力してその写真の食事内容を分析して、食生活改善の講習会や「バランスのよい食事のしかた」などのパンフレットを配ってドライバーの意識改革を行いました。
取り組み後の期待・展望
施策実施の結果、ドライバーの健康に関する意識もだいぶ変わってきており、摂取エネルギー量やバランスを意識しながら食事をする人が増えてきています。
現段階では、すぐに成果は確認できませんが、ドライバーの意識改善とともに生活習慣病のリスクのある従業員が徐々に減ってくることが予想されます。それによって、ドライバーの健康を害するリスクも低減し、事故の防止や労働災害発生の予防にもつながってくることが期待されます。