調査研究成果

健康経営と補助金・助成金

健康経営優良法人認定の特典の一つとして、経済産業省が主管する補助金の加点措置があります。
現在(2024年7月時点)、「Action!健康経営」で公表されている加点措置の補助金は以下の通りです。

 

加点措置の補助金

補助金の名称 補助金の目的
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金) 中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援
IT導入補助金 生産性向上やインボイス対応など、様々な経営課題を解決するためのITツール導入を支援
事業承継・引継ぎ補助金 事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業・小規模事業者に対して、その取組に要する経費の一部や、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎに要する経費の一部を支援
Go-tech補助金 特定ものづくり基盤技術及び IoT、AI 等の先端技術を活用した高度なサービスに関する研究開発や試作品開発等の取組を支援
事業再構築補助金 ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援

※各補助金のWebページ、公募要領に記載の事業目的から抜粋

加点措置といっても、おそらく加点の度合いはさほど大きくはなく、加点の申請をしたからと言って必ず採択されるものではありません。
ただ、これらの補助金は事業計画の中身を審査され、内容の良いものから順に採択が決まっていきます。
その点を考えると、採択・不採択のボーダーライン上にある事業計画においては、この加点が採択の可能性を大きく上げるのは間違いなさそうです。
 


健康経営の取り組みに対して補助してくれる制度

さて、これらの補助金の目的について改めて確認してみると、それぞれ内容は異なっていますが、生産性向上や新たな取り組みへの挑戦といった「自社の成長を促す取組」を共通の目的としており、「自社の健康経営を促進する取り組み」については対象になりません。

実際、健康経営に取り組もうという企業の中には「取り組みをしようと思ってもお金がかかって足踏みしてしまう」という声もよく聞かれます。
そこで、中小企業が行う健康経営の取り組みに対して補助してくれる制度・補助金についていくつかご紹介したいと思います。
 

1.国(厚生労働省)の助成金 

「エイジフレンドリー補助金」
高年齢労働者の労働災害防止対策や労働者の転倒や腰痛を防止するための専門家による運動指導等、労働者の健康保持増進を目的とした補助金です。
高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備装置の導入だけでなく、転倒防止や腰痛防止のための専門家の運動指導等に要する経費、事業所カルテや健康スコアリングレポートを活用した健康保持増進の取組(健康教育に関する研修費用、コラボヘルスを推進するためのシステム導入、栄養・保健指導など)について支援します。
https://www.jashcon-age.or.jp/
 

2.都道府県の助成金

東京都(東京しごと財団)「ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金」
先程のエイジフレンドリー補助金とは対照的に、こちらは若手人材を想定している助成金です。
従業員の住宅・食事・健康に関する福利厚生の充実による従業員のES(Employee Satisfaction 社員満足度)の向上を通じて、若手人材の採用・定着を図る都内中小企業等を支援するための補助金です。
元々の目的は若手人材の採用定着を図ることが主眼に置かれていますが、職場での食事等を提供するサービス(置き型の社食など)の導入や、従業員の健康増進を目的とするサービス(職場でのフィットネス講座など)の導入に対して、最大3年間助成してくれる助成金です(上限額あり)。
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/saiyo-sodan/es.html
 

3.区市町村の補助金

山口県宇部市「宇部市健康経営支援補助金」
市内中小企業の従業員満足度向上、人材確保につなげるために行う健康経営に関する取り組み(ストレスチェック、食生活改善、運動機会の増進、受動喫煙対策、健康経営優良法人認定申請費用など)にかかる費用の一部を補助してくれる制度です。
「企業が継続して健康経営に取り組んでほしい」ということを想定しているからか、初回の申請より2回目以降の申請の補助上限額がアップする(20万円→30万円)のも面白い補助金だと思います。
https://www.city.ube.yamaguchi.jp/machizukuri/sangyou/tyuusyoukigyou/1017069.html
 

これらはあくまで一例です。
補助金というと国(経済産業省、厚生労働省)が行っているものがクローズアップされがちですが、都道府県や区市町村でも独自の助成金・補助金が実施されている場合があります。
興味がある方は、事業所のある自治体のWebサイトを確認してみてはいかがでしょうか。
 

中小企業診断士
健康経営エキスパートアドバイザー
大口 憲一

 

TOP