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クアオルト健康ウォーキングを体験しました(その1)

先日、所沢市において開催された「クアオルト健康ウォーキング」に参加してきました。
今回はそのご報告をいたします。

さて皆様は「クアオルト」という言葉をご存じでしょうか?
私も、健康経営支援に携わるようになり初めて知った言葉です。
ドイツ語で、「クアオルト」は「療養地」という意味になるようです。
(※「クアオルト」、「クアオルト健康ウォーキング」、「気候性地形療法」、「クアの道」、「クア(Kur)」は日本クアオルト研究所の登録商標です)
 

発祥の地ドイツにおけるクアオルトとは

ドイツにおいてクアオルトは、病気になったものが療養するためのものであり、その起源は19世紀に遡ります。国が地域を指定し、そこでは医療保険を使い療養することができるようになっています。
長い場合3週間程度滞在して療養することもあるようです。ただし、近年では保険治療だけではなく、自費で健康づくりに利用している人も多いようです。

クアオルトでは、各地域の自然を使った治療や病気の緩和、予防を行ないます。
土壌に由来する温泉や泥・蒸気、海に由来する海水・海風・海の泥、気候に由来する太陽光線や空気、などを利用します。

少し古い数字となりますがドイツ全体で、温泉が157箇所、泥・蒸気の場所が56箇所、海が91箇所、気候が68箇所など、合計で約400箇所が指定されています(2007年のデータ)。
利用状況としては、年間で約2,900万人が利用し、約1億3000万泊の宿泊数となっています(2019年、ドイツ治療湯治場連合調べ)。ドイツの人口(2019年)が約8,300万人であることを考えると、かなり利用されていることがわかります。
 

日本におけるクアオルト

このように聞くと、海辺も温泉も豊富に存在する日本にピッタリなのではないでしょうか?
古より日本各地の温泉地にも、病気にかかってしまった人びとが、それを直すために「湯治」として訪れていました。

ところが、ドイツにおけるクアオルトは医療保険制度であるため、専門医や医療機関のほか、様々な施設の設置が必要となります。
日本でスピーディーに設置するためには、法制度の改正が必要となりますし、費用の面からも難しいものがあります。そこで、日本に合わせたクアオルトが開発されてきました。

日本におけるクアオルト設置の動きは、1971年に大分県旧湯布院町で始まりました。町は「湯布院町クアオルト構想」を掲げ、1990年には温泉プールのある「健康温泉館クアージュゆふいん」を建設をしています。

ただし日本で本格的に広まってきたのは2000年代になってからのことになります。
2008年山形県上山市において、ミュンヘン大学アンゲラ・シュー教授の指導のもと、ドイツの気候性地形療法を手本としながらも日本の自然に合わせた「クアオルト健康ウォーキング」が開発されました。

また2015~2016年には、日本での普及を図るため、「日本クアオルト研究機構」、「日本クアオルト協議会」、「株式会社クアオルト研究所」が設立されています。
このような機関や自治体が取り組んだ結果、2023年4月現在、全国で25の自治体において、69のクアオルト健康ウォーキングのコースが設定されています。
 

気候性地形療法を取り入れたクアオルト健康ウォーキング

気候性地形療法とは、「地形療法」に「気候要素(特に「冷気と風」)」を加え,運動効果を高める手法です。心臓(心筋梗塞や狭心症),高血圧,骨粗しょう症等に効果があると言われています。

傾斜のある土地を一定の運動負荷(全力の約60%)をかけて歩くことで、心臓と循環のトレーニングを行います。約60%の運動強度で効果が最大になるという研究報告があるからです。その運動負荷量とするために、心拍数によりコントロールします。

また、汗を上手に蒸発させて気化熱を利用して体表面の温度を下げ、主観的には「やや冷える」と感じるくらいに調整して歩きます。身体の体表面温度を平均2度低くなった状態とした時に運動効果が増すというエビデンスがあるからです。

この運動を1回20~40分、1週間に3~4回、 3~4 週間行いますが、日本におけるクアオルト健康ウォーキングでは、日帰りのものもあるなど工夫がされているようです。

次回、「クアオルト健康ウォーキングを体験しました(その2)」をお届けします。

参考文献
・日本温泉科学会第68回大会公開講演I-2
「ドイツと日本におけるクアオルトと気候性地形療法に関する研究」小関信行
http://j-hss.org/journal/back_number/vol65_pdf/vol65no3_164_170.pdf
・日本クアオルト研究機構HP https://kurort.jp/kurort/japan_kurort/index.html
・太陽生命HP https://www.kurort-award.jp/kurort/
・所沢市HP https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kenko/karadakenkou/kenkodukuri/kurort.html
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/iitokoro/enjoy/kanko/news/kurort.html
・湯布院温泉郷(由布院温泉、湯平温泉、塚原温泉、庄内温泉、挾間温泉)国民保養温泉地計画書
https://www.env.go.jp/nature/onsen/area/pdf/hoyo_067.pdf
・青森銀行HP https://www.a-bank.jp/contents/guide/aboutabank/csr/report/work04.html
・経済産業省東北経済産業局「東北地域における健康経営優良法⼈2022取組事例集」
https://www.tohoku.meti.go.jp/s_service/healthcare/topics/pdf/230331.pdf#page=7
・上山市HP https://www.city.kaminoyama.yamagata.jp/site/kurort/kenko-keiei.html

健康経営エキスパートアドバイザー
中小企業診断士/社会保険労務士
河﨑 展生

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